水質基準値:0.06mg/L
今回はこのうちクロロホルムの水質基準値が子供にも妥当かどうか検証してみました。
小児がんの危険性がないか検証しました。
クロロホルムとは
浄水過程で、水中のフミン質等の有機物質と消毒剤の塩素が反応して生成されるトリハロメタンの主要構成物質です。
毒性評価
げっ歯類を用いた長期試験では発がん性は認められるが、WHO(1994)の評価によれば、これらの発がん作用は遺伝毒性に基づくものではないように考えられている。従って、評価値の算定は閾値のある毒性の場合と同様にTDI法に基づき算定されるべきであると考えられる。
WHO(1996)のガイドライン値は、犬の長期間投与試験(Heywood et al., 1979)のLOAEL:15mg/kg/dayに基づいて算定された。
その後、短期間ではあるがNOAELの求められている、マウスの経口投与試験(Larson et al, 1994b in WHO 2000)が報告された。
雌B6C3F1マウスに、クロロホルムを強制経口投与により0, 3, 10, 34, 238, 477 mg/kg/day、週5日で3週間与えた結果、用量依存的変化として小葉中心壊死がみられ、238, 477 mg/kg/dayでは顕著に標識指数が上昇した。組織病理学的変化(細胞致死率と再生過形成)に基づきNOAELは10 mg/kg/dayと考えられる。このデータはHeywoodらの試験結果より得られたLOAELを補強するものであると考えられる。
水質基準値の算出方法
評価値の算出
評価値の算定に当たっては、WHO 等が飲料水の水質基準設定に当たって広く採用している方法を基本とし、食物、空気等他の暴露源からの寄与を考慮しつつ、生涯にわたる連続的な摂取をしても人の健康に影響が生じない水準を基として設定しています。
具体的には、閾値があると考えられる物質については、基本的には
・1 日に飲用する水の量を2L
・人の平均体重を50kg(WHO では60kg)
・水道水由来の暴露割合として、TDI の10%(消毒副生成物は20%)を割り当てとする条件の下で、対象物質の1 日暴露量がTDI を超えないように評価値を算出しています。
実際にクロロホルムの算出を説明します。
評価値(クロロホルム)
TDIは、LOAEL:15 mg/kg/dayに週6日投与による補正を行い、不確実係数:1000(個体差と種間差それぞれに10、LOAELの使用による係数10)を適用し、12.9μg/kg/dayと求められる。
消毒副生成物であることにより、TDIに対する飲料水の寄与率を20%とし、体重50kgのヒトが1日2L飲むと仮定すると、評価値は0.06mg/Lと算定される。
まず、TDIについては簡単に説明すると、
Tolerable Daily Intake(耐容一日摂取量):ヒトが摂取しても健康に影響がない、汚染物質の一日あたりの摂取量。
クロロホルムの水質基準値の算出式=12.9×50/2×0.2=64.5μg/L=0.064mg/L≒0.06mg/L
ここで、
①12.9はクロロホルムのTDI
②50は50kgの人の体重(日本の水質基準は体重50kgをもとに算出される)
③2は1日に飲用する水の量:2L(日本の水質基準は2Lをもとに算出される)
④0.2はTDIに対する飲料水の寄与率:20%=0.2(クロロホルムは消毒副生成物なので20%)
(参考)
単位μg(マイクログラム)はmgの1000分の1、mgはgの1000分の1
つまり、1000μg=1mg、1μg=0.001mg
以上で、クロロホルムの水質基準値が0.06mg/Lと求まりました。
小児がんの危険性の検証
ここで、新たな見解として、大人以外の子供にもこの0.06mg/Lが妥当なのか検証してみました。
なぜかというと、子供は体重が軽いため、クロロホルムの悪影響を受けやすいと考えたからです。
参考にしたページはこちらです。
https://komidori-info.com/archives/7330
・小児1歳(平均体重9kg) 120~135ml×体重
・6歳(平均体重20kg) 90~100ml×体重
1 小児1歳(平均体重9kg)の場合
①体重9kg
②1日に飲用する水の量:120×9=1080 ml=1.080L
クロロホルムの水質基準値の算出式=12.9×9/1.080×0.2=21.5μg/L=0.0215mg/L≒0.02mg/L
検証結果
なんと、小児1歳(平均体重9kg)の場合では、0.02mg/L以上では発ガン性の恐れがあるのです。
例えば、クロロホルムの値が0.04mg/Lの場合には、成人では水質基準を満たしていても、それは成人(体重50kg)に対して満たしているのであって、小児1歳(平均体重9kg)の場合では、その悪影響が出る数値は0.02mg/L以下でなければならないので発ガン性の恐れがあるかもしれません。
2 6歳(平均体重20kg)の場合
①体重20kg
②1日に飲用する水の量:90×20=1800 ml=1.8L
クロロホルムの水質基準値の算出式=12.9×20/1.8×0.2=28.6μg/L=0.0286mg/L≒0.03mg/L
検証結果
なんと、 6歳(平均体重20kg)の場合では、0.03mg/L以上では発ガン性の恐れがあるのです。
例えば、クロロホルムの値が0.04mg/Lの場合には、成人では水質基準を満たしていても、それは成人(体重50kg)に対して満たしているのであって、6歳(平均体重20kg)の場合では、その悪影響が出る数値は0.03mg/L以下でなければならないので発ガン性の恐があるかもしれません。
★このように現在の日本の水道水質基準は、成人に対してのみ、許容される数値ではないかという結論になりました。
対策
以上のように成人よりも体の小さな子供では、水質基準以内であっても危険な場合があります。
水質基準が成人を基準に策定されたという背景がその原因です。
それでは、子供を守るためにどのようにすれば良いでしょうか?
対策方法
①沸とうさせる
(確実な方法)
トリハロメタンは、煮沸すると最初の3~4倍に増加し、10分以上煮沸することで少しずつ減少し、50分でゼロになります。つまり、トリハロメタンの危険性から回避するには50分煮沸を続ける必要があるのです。
(簡便な方法)
(トリハロメタンはゼロになるかは保障できません)
沸とうさせると、 トリハロメタンは気化して水中から除去することができます。
このときに10分以上沸とうを続けてください。
トリハロメタンは、沸とうして5分程すると一時的に水中濃度上昇しますが、さらに沸とうを続けると蒸発するため、除去することが可能です。
5分程度で沸とうを止めてしまうと、逆にトリハロメタンが増加してしまうので注意が必要です。
電気ポットでは、沸とう操作を数回繰り返すことで除去することができます。
②活性炭にとおす
活性炭の表面には目では見えない小さいすき間が空いていて、そのすき間に色々なものを取り込む性質があります。
残留塩素と同様にトリハロメタンも活性炭に吸着されるため、除去することができます。ただし、活性炭の吸着量には限度があるため、市販の浄水器等で活性炭吸着装置のついたものをご使用になる場合は、適正な交換時期を守って使用して下さい。
③最も確実な方法
ここで知ってほしいのは、水道水は煮沸するだけでは絶対に安全とは言えないという事です。(トリハロメタンは塩素との反応で生成します)
そこで、水道水を煮沸する前に、塩素をはじめ水道水に含まれる全ての有害物質を取り除く必要があります。
そのために家庭で出来る一番確かな方法として浄水器でろ過する以外安全な方法は今のところないと思われます。
要するに、一番確実なのは、次の通りです。
活性炭付きの浄水器でろ過する→50分煮沸する。
まとめ
①化学物質の水質基準は成人を基準に定められたものなので、体の小さな子供に対しては十分でない場合があります。
②そのためには、化学物質を十分に除去してから子供に水を飲ませた方が安心です。
補足1 胎児に対して
胎児に対しては、今回検証しませんでした。しかし、お腹の中にいる赤ちゃんは胎盤を通して酸素や栄養物質をお母さんから受け取ります。
さらに妊娠後期になるとお腹の中の赤ちゃんは1日に500mlの羊水を飲みます。赤ちゃんだけでなく、お母さんが摂取する水にも気配りが必要です。
補足2 水質基準は変わることがある
水質基準は変わることがあります。
新たな知見が得られれば、より厳しくなることもあります。
今取り上げてはいませんが、水質基準が強化された物質もあります。
近年では、ジクロロ酢酸やトリクロロ酢酸といった物質が水質基準が厳しくなっています。
ですので、現状の基準で絶対に大丈夫であるとは、だれも断定できないのです。
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